今年見た映画・読んだ本 トップ10プラス1

 2011年もあとほんの少し。僕自身も、日本も、世界も、激動の一年でした。
 身辺に不幸や悲しい出来事は(もちろん、震災という大きな出来事の中では様々ありますが)少ない一年でしたが、自分自身では、いろいろな事が大きく動きすぎて、自分のバランスを取る為に、どのようなスタイルを保つか、非常に難しい一年でした。
 そんな中、自分の胆、礎を落ち着かせてくれたのは、やはり映画や音楽や、本。時間を割いた分量、心を動かしたボリュームで言えば、今はそこにWebサービスも入ってくるのでしょうが、とりあえず今年一年の中で、僕が思うところのあった作品を・・・。相変わらず流行を無視して古いものばかりですが。特に今年は冒険モノ、ミステリーモノに大きく舵を切って没入した一年でした。
 とりあえず、順不同で10作品!
 そして、一昨日亡くなった書評家・内藤陳さんに敬意を表して。
 
【おとうと】

 家族モノはあまり見ないのですが、釣瓶の演技力に見惚れました。釣瓶の演じる弟の姿に、様々な人が重なって、ああ、愛すべき人にぼくは囲まれて生きてきたのだなぁと改めて実感しました。え、僕自身がこのキャラだって?
【レスラー】

 齢三十も後半になってくると、「オレの全盛期はまだまだこれからだ」と嘯く声もほんの少し弱ってしまいます。いやいやまだまだ僕はこれからのオトコですけどね。そんな声と真逆の作品ですが、全盛期を超えた(と表現される)男の愚直な生き方。身体がガタガタになりながらも、自分の死に場所を自分で決めた気になって倒れこんでいく男の物語。しぶとく生きるより、華々しく散りたいのですよ。わかる。うん。オトコって、馬鹿ですね。上記「おとうと」もですが、どうも最近オトコの馬鹿さ加減を愛してやまない気がします。
【昭和残侠伝】

 馬鹿なオトコモノ三連発。池辺良がヤニ臭くてかっこよすぎます。高倉健はお決まりの、我慢して我慢して我慢して最後にオトコを魅せて散っていく。あ、やっぱり散っちゃうんだ。でもこの行動規範と美意識には僕らは逆らえないのです。意地と見得で生きていくのです。震災後、改めてこの作品を見たのですが、生き抜くことと見得を切ること、その両立の難しさ、険しさを改めて思い知り、(詳細はまた別途記しますが)ああ、這いづってでも生き抜く逞しさを持つ女性と、すぐに見得張って(切るんじゃなくて)散ってしまう男性は、結婚して夫婦になって生きる意味がそこにあるのだなぁ、と思いました。はい、ええ、僕子供だからよくわかんないけど。
【深夜プラス1】

 今年読んだ本ベスト1。詳細は以前のブログに書いたので割愛。
 内藤陳さんへの敬意云々関係なく、この本は読了した瞬間にトップでした。合掌。
【文学部唯野教授】

 筒井ファンとして、浪人時代、新刊で出たばかりの頃すぐに読みました。けど、その頃はまだ大学も知らず、教授という生き物がどのようなものか全く解らずに、いまひとつ面白みに欠けました。改めて大学を経て、現在も学術に関する場所で務めるものとして改めて読む。抱腹絶倒。あまり書くと僕の立場が大変な事になるので割愛します。ええ、割愛しますったら。詳しくは本著を是非。そして文学論は下手な専門書より断然わかりやすく詳細。さすが我らの筒井康隆様です。変態的天才的変態。
【炎の経営者】

 いろいろと近縁ある化学工業の会社社長奮闘記。読んでる側も燃えます。経営とはこんなにも熱く苦しく、情熱的なものか。これがノンフィクションだというのだから恐ろしい。そりゃ高度に経済も成長するわけです。と他人事に傍観できないほど「お前は熱く世界に価値を生み出しているのか!?自分を信じているのか!?」を両肩を掴まれて揺さぶられてしまいます。
【女王陛下のユリシーズ号】

 男シリーズ第4弾。今年はオトコの当たり年なんだなぁ。かなり有名な小説ですが、恥ずかしながら初見でした。600頁を超える中、登場人物は全て男男男。総勢?名全員オトコ。女性が一人も出てきません。そりゃ戦艦の中の話だから、乗組員だけなので当たり前といえば当たり前なのですが。でも、それゆえに読者に擦り寄るようなラブロマンスももちろんなし。あるのは極寒と敵襲と忍耐のみ。勝利の見込み不可能な作戦を言い渡されて、ただひたすら北海を行く三十三隻の英国艦隊。ドイツ軍に次々と撃破され、満身創痍の状態の中、最後に登場してくる独軍最強戦艦ティルピッツ号・・・と、少年漫画も真っ青な、困難に告ぐ困難のストーリー。手に汗握る、というか、手が凍傷になります。読んでて本気で寒くなります。因みに著者マクリーンの作品としては「ナヴァロンの要塞」も有名ですが、僕はどちらかというとこっちの方が好きです。
【台風クラブ】

 三浦友和が三十代先生の役どころ。「先生、貴方には幻滅しました。」と歯向かう中学生に向かって「いいか、お前らも、オレぐらいの年になったら、こんな大人になっちまうんだよ!」
・・・前にこの作品を見たときは、中学生。今の僕は三十代後半。いろいろと痛い。痛すぎる。そして僕はまだまだ中学生に近い痛さと幼さを内包したままこの年になってしまった。思春期の映画ですが、僕はまだまだ思春期であり、中二病です。よーく見ろ。これが、死だ!
【先任将校】

 更にオトコもの。というか軍艦モノばかり読んでる気がするな。今度は日本軍ですが。そしてユリシーズ号の時は極寒が敵でしたが、今度は飢餓。・・・人間にとっての最大の恐怖は飢餓と寒さと睡眠不足とはよく言ったものです。本当に怖い。そしてユリシーズ号同様、将校の統率力と機転でなんとか生き延びるその姿は、生きるとは何か。組織とは何か。を十分に教えられます。統率力とは即ち人間性なのですね。
 
【鷲は舞い降りた】

 深夜プラス1とこの本が並ぶと、誰の影響を受けてるかすぐわかってしまいますね。台風クラブ同様、これも昨年以前に読んだ再読ものですが。改めて読んでもやはり素晴らしい。英国軍ものを読んだ直後に今度はドイツ軍が主人公。主人公シュタイナのヒーローぶりは少し美化されすぎたきらいもありますが、何より活かしているのがアイルランド解放軍のリーアム・デブリン。深夜プラス1の副主人公ハーヴェイ・ロヴェルと並ぶサブヒーローです。ラブロマンスや美味しい台詞を全部もってっちゃってます。そうそう、こちらの作品はラブロマンスあり、危機につぐ危機あり、英雄譚あり、最後のどんでん返しあり、と、読書の楽しさてんこ盛りです。これこそエンターテインメント。
【Cutting Edge】

 番外編。映像編集で少しでもメシを食った事があるモノとして。
 これはバイブルです。編集とは何か。カットとは何か。全てはここに描かれています。
 ペキンパーの作品を、キューブリックの作品を見て、編集の妙に感動した上、この作品を見ると、衝撃波を受けます。
・・・
 
 以上10作品(プラス1)。それ以外にも「ソーシャルネットワーク」「虐殺器官」「クリムゾン・タイド」「ロンメル将軍」「言語姦覚」「若き数学者のアメリカ」・・・いろいろとトップ10に入れたいものがありました。またぼちぼちブログで紹介していきます。
 今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。

読み力

 読書について、思うところがあります。
 頭の中に情景が浮かびどんどんページが進み完全にストーリーの中に没頭出来るときがあるかと思えば、どこまで進んでも没入できず、ただ字面を追うだけで話に引き込まれないなんて時があります。
 もちろん本によってもその文章の美しさや内容によって引き込まれ方は全然違うのですが、それ以前に受けて側の自分、に、左右されることがあるのです。
 A,B,Cと、作者も内容も全く違う本を読んでいても、ただとにかく惰性と慣性だけでページをおい、どの登場人物がどの本に登場してたのかわからなくなり、話も混乱しまくってしまうという事があるかと思えば、どの話も没入しっぱなしで現実世界に戻ってこれない、ニートの出来上がり、という事もあるわけです。
 ややこしいことを書いてますが、まさにちょうど今自分がその境界線から反対側に移動した瞬間を感じたのです。うん、パチッとスイッチが切り替わるような。言葉の追い方を思い出したというか、ドラクエ的に「やまもと は クラスチェンジした」ような。どっちが上下、というものはない世界ではあるのだけれど。
 最近は古い名作月間という事もあり(自分的に)、国の内外問わず古い作品ばかり読み漁ってるのですが、その中に、2年前に読んでた「鷲は舞い降りた/ジャック・ヒギンス」があったのです。今更というところなので紹介は控えますが。
 以前に読んだこともあるので、話の筋も内容も良く知っていたのですが、昨日まではもうなんだか、ただ右手に本持ってます、の状態で、ただひたすら小学生の朗読のように文字を追いかけてました。
 それがさっきの風呂場で(僕は風呂場で本を読みます。なので古本を購入しまくる癖がついてます)いつものとおり読書してると、これがまあ頭に入る入る。物語にジャックインする感覚があったのです。
 物語が佳境に入ってきたからかなー、とも思ったのですが、そばにある雑誌を読んでも、専門書を読んでも、今までとはちょっと違う様式で頭に留まるようになりました。
 読書は能動的な行動だ、とも言われますが、読書にはトレーニングがある程度必要だと、改めて感じました。それこそ語学や数学と同じように。
 どんな本でも一定で読みきれるかといえばそんなわけも無く、ある程度本読みに慣れ親しんでないと読めない本もあるし、その逆もあります。読書家の皆さんからすると何を今更、なお話ではありますが。
 いや、当たり前のことなんですが、この能力って、自分の体力や体調によっても、かなり能力が上下するものなんですよね。で、それをわきまえずに自分の趣味で本を選んでると、全く能力不足の本をただ惰性で追ってるだけの状態(それはそれで価値のあることもあると思うのですが)になったりするのです。でも、せっかくだから、楽しい読書時間を持ちたい。その意味では、自分の読み力にあった本を楽しみたい。で、そのためには自分の読み力をある程度把握しておきたい。
 それがなんか一つ、クンと眼が覚めたような感覚が最近あったので、とどめておこうかなー、なんて思った次第でございます。
 むしろココのところが読み力を失ってた、というのが適切なんだろうな。なんでヒギンスの小説すら読めなくなってたんだ。むしろその能力低下の方が心配だ。

今日でサイト開始から十二周年。

as a snake
 1999年12月26日、僕はこのサイト「RoyalScam」をはじめました。
 それから12年、よくまあ飽きずに続けてこられたものです。おめでとうありがとういやもうどういたしまして。
 誰が読んでるかまるで気にせず、時に「読んでますよ」と言われたらうろたえ、「え、そんなサイトやってるんですか?」と言われたら寂しくなり、SEOもコンテンツ充実も一切気にせず僕の20代後半からの不埒放蕩三昧をただただ垂れ流すだけのサイト。時代はテキストサイトからブログ、Twitterを経てソーシャルメディアへ。僕はただひたすらぐちぐちとこの場を離れず書きなぐるだけ。
 人間の一生なんてほんの数メガバイトにしかならないものなのですね。スーパーファミコンのカセット一つに入ってしまいそうな僕の半生。
 12年、干支まるごと一つ分です。その間なにやったかとかもう振り返るのすらやりたくない。
 明日に向かって這いずり回るのみです。生き抜くよ。

気狂いピエロから始まる連休

 少し、長い休みに入る予定です。
 ここのところ、ひたすらに寝ています。これでもかというくらい。人間はどこまで眠ることが出来るのでしょうか。
 長年、かみさんの病気に付き添って居たことからも、睡眠が人間の精神にどれだけ安定をもたらすかは良くわかっているつもりでした。とにかく、心が穏やかじゃなくなったら、ガンガン寝る。それだけで人間は落ち着きます。いや、本当に。
 人間、少し心が傷ついたら8時間ほど睡眠を取るのが一番だと思います。何より睡眠不足は良くない。精神のどこかに軋みが出てくるものと思います。
 寝るの好きなんですよ。どれくらい好きかっていうと、朝起きてご飯食べたらまた布団に入って熟睡するレベル。24時間中今は22時間くらい寝てるのじゃないだろうかと思います。たまたま起きてる時間にブログ書いてますが、夢うつつのまま布団の中でもiPhoneとケーブルテレビのリモコンと電気毛布のスイッチとエアコンのスイッチ、お茶のポットと茶菓子は全て手の届く範囲に常備されてます。
 そのまま起きなくても生活が出来るのではないか、80日間世界一周ならぬ80日間布団から出ない、なんて生活もできないものかと真剣に考えてます。睡眠は本当に大事です。みなさん、生きてる合間に休憩のために睡眠を取るのではなく、睡眠を取ってる間が生き様で、たまたま余った時間で身体を縦にしているだけではないでしょうか。
 ともあれ、睡眠を十分に取る、その十分の範囲って、今の社会人が考えてるレベルでは足りないのじゃないかと思ってます。
 一日8時間?とんでもない。それだと普通に一日生活した分の体力を復活させるだけで精一杯です。その間におきたトラブルや、心の傷、ショック、驚き、そういったものを身体にならすことを考えたら、一日のうち24時間は寝てないと身体がもたないと僕は考えてます。うん、一日起きて一日寝るレベル。ちなみにうちのかみさんは5年くらい寝たら身体が動き出しました。そういう事例をみてると、睡眠が与える影響ってもっと真剣に体に与える環境を作らないといけないのではないかと思っています。
 てなわけで、ココのところ、連休はひたすら睡眠。ひたすら熟睡。ひたすら安眠。たまにケーブルテレビつけて映画見て、本読んで、ネットして、の毎日です。
 睡眠の合間にたまたま見たのが「気狂いピエロ」ゴダール監督の名作です。僕も5回くらい見てる計算です。(でも前見たの15年ほど前だけどね)
 この映画を消化するのにも、また睡眠が必要です。いや、これこそまさに睡眠の中で映画を堪能しなおすくらいの勢いです。
 気狂いピエロから始まる連休。なかなか楽しげなものです。

幸福をきちんと生きるためには、不幸をきちんと生きなければならない。

幸福をきちんと生きるためには、不幸をきちんと生きなければならない。
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生をリアルに感じるには、死をリアルに感じなければならない。
幸福とは、こうした人生の矛盾した二面性のなかから、
あなた自身の物語を引き出すことである。
低迷期を、どう きちんと生きるか。どう自省して、生かすかですね。