Live Repo~Rolling Stones

今日は一週間前のRolling Stonesライブレポです。もう一週間も前のことなんだな。なんだか、つい昨日の事のように感じてます。今までも、いろいろライブやコンサートに行ったけど、Stonesはその中でも別格でした。技術的にはもっと上手なバンドも一杯あるんだろうけど、その存在感、手練具合、ルーズさ…全てが類を見ない味となって蓄積された、噂に違わぬ天下無双のバンドでした。やっぱ良いわぁ、Stones。ここ見てる人で、Stones聴いた事のない人居たら、是非聴いてください。もしくは僕に酒をおごってください。嫌になるほどStonesの良さを語ってあげましょう。


…それじゃ意味が無いのかな。



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えー、おほん。


突然ですが、僕はSteelyDanと言うバンドが好きです。サイト名見ればわかるって?まあ、そう言いなさんな。今日はこれが本題じゃないから、まあ聞いてくれ。で、SteelyDan、一時期はホントに三度の飯より好きでした(最近落ち着いたけど)。一番嵌ってる時期は「Aja」を聴きながら白飯3杯食べました。馬鹿って言うな。そんなのでドナルド(SteelyDanのVo)が喜ぶとは思えないんだけどさ。彼、捻くれモノだし。


 でも、それにも増して、僕の中で根付いているバンドがあります。


 取りたてて、「あ、こいつら良いよねー。」とか言う事は余り無いんですが、自分の中ではしっかり心の「別格箱」に格納してある天下無双のバンドです。


 母親がこのバンドの大ファンだったのが一番大きく影響してるんだろうね。3歳くらいの時、「Goat’s head Soup」を聴きまくって(聴かされまくって?)「ぁえんじぃ~、あぃぃ~んじぃ~」と親子で合唱してました。小学生の頃は「べガ-ズ・バンケット」を聴きながら「フー、フー」と踊ってた記憶があります。中学生の時は母親から「PremitiveCool」をプレゼントされ(ミックのソロだけど)、高校時代には「SteelWheels」「FlashPoint」を愛聴してました…丁度初来日してたんだよな。ラジオでやってた東京ドームライブをカセットにとって、繰り返し聞いてたっけ。大学時代はDeepPurpleやQueenをよく聞いて、演奏してたけど、でも「Boodoo Lounge」もコピーしたなぁ。彼らにどっぷり浸かった生活を送ってたわけじゃないんだけどね。記憶をたどってみると、「そういう事をやってたなぁ」と感じる事が多いんです。


 そう、僕は自分の意思か、周りの環境か、運命か、つかず離れずだけど、常に「The Rolling Stones」を聴き続けて育ってきました。


 正直、僕が生まれた頃、彼らは既にベテランバンドな訳です。母親の青春であり、僕にとっては過去の遺物と言い切っても良い存在だと感じてた事もあります。いやほんと、前世紀中に消えてしまうだろう、とどこかで思ってました。そりゃそうだ。自分が中高生の頃聞いてたBOOWYやBlueHartですら、皆引退してしまったと言うのに、母親の青春がリアルタイムで活動してるなんて信じられないわけです。


 でも、彼らは活動してました。まだくたばってませんでした。御年60歳。まじかよ。


 丁度3週間ほど前、珍しく母親から電話がありました。


 「あ、あんた。RollingStonesのコンサート行かない?」

 「え、そりゃ、行けるもんなら行きたいけど。」

 「私チケット取ったんだけど、行けなくなったから、あんた行ってきなさい。」


 これまた本気ですか。本気と書いてマジと読みますか。正直初めは耳を疑いました。50を越えても富山から東京ドームへ足を運ぼうとする母親も大した物だけど、そうさせようと思わせる魅力があるStonesも大した物です。それにしても、この僕がリアルタイムでRollingStonesを見る事が出来るなんて、思ってませんでした。とにかく、母親へ、ありがとう。代わりにめちゃめちゃ楽しんできました。本来なら、僕が親孝行するべき年なんだけどね。孫の顔くらい見せてやりたいんだけどさ。まあ、もうちょっと待ってえな。


 と言うわけで、行ってきましたTOKYO DOME。相方はやっぱり母親の友人、一緒にEnglishに行ってビール三昧になったMIYUKIさんです。うちはかみさんも揃ってライブ好きなのですが、今回は家でお留守番です。うちのかみさんにStonesは38年早い。トイレに入って落書きしたくなるようになれば連れていきます。


 と言うわけで、前置きが長くなりましたが、LiveReport、どうぞ。


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3月16日 午後17時半


水道橋駅改札でMIYUKIさんと待ち合わせ。外は小雨が降っていて、ちょっと肌寒い。


「あ、私、東京ドームはじめてだから、案内してよ。」


案内も何も、目の前に東京ドームはあるのだけれど、まあ、そんな事は言わない。わからない人にとっては近くにあることもわからないのだし。

改札から、大勢の人が東京ドームに向かって流れている。3人に一人は、体のどこかに例の「ベロマーク」をつけている。ジャンパーだったり、ピアスだったり、ネックレスだったり。みんながStonesをに何かの思い入れを持っているんだろうなぁ。Stonesが好きなんだろうなぁこういった見知らぬ人同志の連帯意識も、ライブの大事な要素の一つだと思う。


水道橋の陸橋を渡り、回転扉を通り抜けて、いざ東京ドームの中へ。


東京ドームはエアロスミスのコンサート以来、5年ぶりだ。その時も思ったが、広い。とにかく広い。そして、この広い空間が後一時間後には人で一杯に埋め尽くされるのだ。わくわく。


 球場の、いわゆるグラウンド、外野部分にステージが設置されている。僕らはピッチャーマウンドのちょっと右側に陣取った。て、チケットに席が書いてあるんだけどね。


 すぐ左には5メートル四方の謎の台、右側にはPA卓がセットされている。仕事でも、PAまがいの事をやっているから、どうしてもPA陣の仕事振りに目がいってしまう。ああ駄目だ駄目だ。今日は仕事じゃないんだってば。


ステージの上方には唇、ゴミ箱、下着…あまり上品とは言えないコラージュ写真が、これまた上品とは言えない巨大さ(どれくらいだろ…縦20m×横50mくらいかな)で僕らを迎えてくれている。コラージュから思い浮かぶのは乱雑、無秩序、どうでも良し、エロチック…どれもstonesらしいキーワードだ。その下にはまだ真っ暗なステージが。


とりあえず開演まで後30分。ビールを買って、がんがん飲み干す。


頭がとっても良い気分になった頃、6時半、開演時間となりました。


始まりません。


まあ、まだ客の流れは止まってないしね。どんどんお客さんが入ってきてます。このままじゃライブも始まらないよね。
まあ、時間通り始まるライブなんてね。そのまま何も無かったようにもうちょっと待とうか。

 そのまま20分。


 始まりません。


 延々とBGMのブルースが流れつづけています。でも気がつけば、お客さんはみんな入りきった様。スタンドも、グランド上も、辺り一面「ベロマーク」だらけ。


 ふと、このとき周りを見まわして思ったんだけど、今回のコンサート、年齢層がすごく広いのね。10代や20代が居るのは当たり前として、周りには30代も40代も、50代や60代とおぼしき人々も、数多く見うけられます。そりゃ、演じる人が59~63歳だから、当たり前なんだろうけどさ。でも、ドームのコンサートとしては、こりゃ異例な事だろう。出てくる熱気が、精に満ち溢れた逞しいモノと、枯れや達観の入ったクールなモノと、不思議な入り交じり方をしている。なかなか感じられない珍しい熱だぞ。10代からお年寄りまで、みんながStonesを待っている。いろんな熱気が充満してるけど、期待している事はただ一つ。


 そのまま30分。


 始まりません。


 そろそろお客さんも納まらなくなってきました。BGMの曲が終わるたびに鳴り響く拍手と歓声。少しづつ大きくなるブーイング。次のBGMが始まると溢れるため息。


 まさか、キースとミックが喧嘩して帰っちゃったんじゃないだろうな。


 さすがにステージ回数1000回を越えた熟練、天下のStonesにそんな訳は無いんだけど、それでもほんとにばっくれるんじゃないかと冷や冷やさせるのもStonesならでは。永遠の不良は人騒がせです。


 「まだ始まらないね」

 「そうねぇ、あの人があのままじゃ、まだ時間掛かるんじゃない?」

 MIYUKIさんが指を指した先には、鉄塔の上に登った、ステージを映すカメラマンの姿がありました。


 彼は横になってぐっすり寝てます。


 「ああ、あれじゃまだかかるな。」

 開始の合図が来てないんでしょう。まだまだ始まらないって事だな。

 気がついたら7時半。もう1時間近く待ってます。




 お客さんも痺れを切らしてます。怒声や罵声も聞こえてきます。それでもカメラマンは寝ています(そりゃ、彼の責任じゃないからな。)。




 その時



 カメラマンがむっくりと起き上がりました。

 沸きあがる歓声。高まる期待。なんだ、みんな彼を目印にしてたんだな。


 どん。


 一気に落ちる照明。嬌声と叫び声が入り交じって地鳴りとなる。お尻から背筋にかけて、期待と興奮がぞわわわわわと登ってくる。もう座ってられない。一気に立ちあがる。腕も上がる。うぉーっと、声もでる。叫ばずに居られない


 何時だって、僕はこの瞬間が一番好きだ。ライブが始まる直前、オープニングは何が来るのか、どんな音が出るのか、どんな演出で来るのか、周囲のお客さんの期待感と共有して、体全体が痺れる瞬間。このためにライブに来ていると言っても過言じゃない。


 流れてきたのは「Sympathy for the devil」のイントロ。


 青白くきらびやかな照明が輝く。ステージにはまだ誰も居ない。血が逆流する。興奮する。叫ぶ。


 次の瞬間


 キースだ!!


「Brown sugar」のリフを奏でて、キースがステージ上に飛び出した。目の前にキースが居る!それだけでもう、自分が信じられない空間に居る事に気づく。何度も、聴きなれたフレーズが聞こえてくる。はっと気づけば、チャーリーが、ロニーが、ダリルもいる。


最後に飛び出したのは、我らがStones、Mick Jaggar!


Mickが現れた時、観客のボルテージは一気にMAXに突入しました。この野郎、何時間待たせるんだ。お前を見たくてここに来ているのに。

金のジャケットを羽織り、うわさの巨大な唇を武器にして、ミックが僕の目の前で「Brown sugar」を歌ってる。

これが夢と言わずして何というのか。幼い頃から、話では何度も聞いて、レコード(CDじゃなくて)を聴いて、ライブ映像を見て、別世界のヒーローだったミックが目の前に居る。なんと言うのか、仏教徒にとって、毎日拝んでいるお釈迦様がいきなり現世に現れたような感覚だ(ほんとうか?)。

 信じられない。信じられない。信じられない。

 でも本当に居るのだ。


 ぶらーんしゅがー!と大口で歌っているミックが同じ空間に居る。それだけで、ひざが震えてしまった。足腰の力が抜けそうなのがわかった。


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 それにしても、恐ろしいのはミックのパフォーマンス能力だ。

 4.5万人もの人間を相手にして、ノセるも惹くも自由自在。東京ドーム端から端までのオーディエンスをいともたやすくパペット人形のように操っていく。このステージでは、最初2曲は巨大スクリーンが登場していなかった。いわば、スタンドのお客さんにはミックは豆粒のように見えていたのだ。にも関わらず、四肢を存分に活用して、全てのお客さんを魅了する。こなしたステージの回数、経験値と、生まれ持ったパフォーマンスの才能だろうか。正直、エアロのスティーブンやパープルのギランですらこの時は「Mickとは格が違う」と思ってしまった(エアロファン・パープルファンの方ごめんなさい)。ミックが政治家なら、ヒトラーにでもなれるんじゃないだろうか。とまで感じる。生のミックはそれほど、凄かった。


 60歳という年齢も、経験値と言う意味ではプラスだが、パフォーマンス的には決して良い方向には作用しないはずだ。特有のミックダンスを繰り広げ、ゆうに50Mはあるステージを端から端まで、何度となく走りまくり、衰えを微塵も見せずに観客を先導するミックは、本当に天才的なパフォーマーだ。

 余談だが、日本人のアーティストと海外のアーティストでは、パフォーマンスが根底的に違う気がする。

 日本人のアーティストは、どちらかと言うと「一緒に盛り上がろう!」と言う最初に連体ありきの共同体的なニュアンスを感じるが、ミックを初めとした海外アーティストは「何はともあれ、僕を見ろ!」という最初に断絶ありきで無理やりカリスマで引っ張る感覚がある(筆頭はフレディとジーンシモンズ)。どちらが良いと言う訳じゃないけどね。つうか本当は日本的なほうが好きなんだけど、ミックのカリスマ性を見ていると、「もうどこへでも連れてってください。」と言う敬意とも崇拝ともつかない感情に支配されてしまう。なんつうか、もう、最高。


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 おまけに、それだけ飛び跳ねて踊って観客をぐいぐい引っ張るミックに対して、後の3人の淡々とした事。特に全くステージの中央から動かないキース。ゾンビ(ああごめんなさいごめんなさい)とも思ってしまうほどの枯れ具合。一曲終わるごとに片膝ついちゃうし。

 でも、その立ち振る舞いがまたえらくかっこ良いんだなぁ。計算尽くされたパフォーマンスのミックに対して、ナチュラルボーンなキースのギタリスト振り。ほとんど演奏しなかったり、全館禁煙の東京ドームでタバコ吸ってたり(ステージ上で)、何気ない仕草が全て絵になってる。絵になる漢(おとこ)って、キースの事だろうなぁ。キースは存在自体がStonesなんだなぁ。生まれ持ったかっこ良さだよなぁ。決して巧いギタリストでも、早弾きの名手でも、何でもないんだけど、世界最高のギタリストと呼ばれる彼の味はギターを担いでから弾くまでの振る舞いと、弾き終わった後の立ち姿、これに集約されるんじゃないだろうか。ひょっとして、Stonesって、バンドではなくて、キースとミックを二大神とした宗教なんじゃないだろうか?


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 天才的なパフォーマー二人に挟まれて、それでも卑屈にならずに自由に伸び伸びとギターを演奏していたロニー。彼もどちらかと言えばナチュラルボーンなギタリストだなぁ。でも、「かっこ良さ」ではなく、「愛嬌」と言う意味で。


 今回、本当にロニーは「やんちゃ坊主」と言う感じだった。観客を煽ったり、ミックにちょっかい出したり、リサに可愛がられてたり(あれもキャラクターゆえだな)、幼いギター少年がステージ上で喜んでる、と言う感じだった(実際には彼も60近いけど)。見ていて本当にほのぼのする。ミックには徹底的にひれ伏してしまい、キースにはお尻を与えても良いくらい惚れ惚れしてしまうけれど、ロニーを見て正気を取り戻すことが出来る。いやほんと、ロニーの楽しそうな演奏を見ると気持ちが明るくなります。神々しいまでのミックとキース、彼らと人間界の掛け橋をしてくれているんだと思う(何を書いてるんだ僕は)。


 ミックとキースに挟まれて、自滅したブライアン、一人孤高の道を行ったテイラー、その後釜として入ったロニーは、とっても良いポジションにいるんじゃないかな。いいよ、彼。


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 で、チャーリー。


 色々と他のメンバーの事書いてきましたが、ごめん、僕はチャーリーが一番好きです。なんつうか、一番人間として信頼が置けそうで…。いや、ミックもキースもロニーも大好きだよ。でも、この3人とは正直ステージ以外で出会いたくないと思います。うん、いや、僕の側が彼らと対面して正気で居られない、というか人間として対峙する事が出来る自信がないんだよね。でも、チャーリーとは、敬意を持って、接する事が出来そうな気がしてます。何なんだろ。

 特に、今回のライブでは、ずっと仏頂面をしてドラムを叩いてたチャーリーが、メンバー紹介の時に「にこっ」と笑った顔がとてもチャーミングで可愛かったです。ああもう、チャーリー様にもお尻を(略)

 なんと言うのか、後の3人が自分のやりたい放題やっているのをしっかりと後ろでキープしていると言うか、鵜匠というか、長屋のおとっつぁん(それは外見)というか、彼らを精神的に支えているなぁ、と感じます。

 決して、ドラミングも超絶な事をやってるわけじゃないんだけど、不思議と巧さ、味を感じるんだよね。チャーリー特有の「ハイハット抜き」、今回初めて体感しました。あれ、絶妙だわ。

 それにしても、ふと連想してみると、Stonesのドラムは彼以外想像できなくなってるんだよな。例えば、オマーハキムがStonesに…飛び跳ねすぎ。スティーブガッドが…手数多すぎ。デニチェンが…げっぷ。ジャックデジョネットが…知的過ぎ。


 Stonesはチャーリーで持ってます(断言)


 じゃーじゃじゃっ!


 Brownsugarが終わった途端、キースから聴きなれたフレーズが。


 そのまま棒立ちとなるキース


 ??!!


 7拍ほど置いて、始まるStartmeUp


 これこれ。この危うさ、そしてこの立ち姿の美しさがキースの真骨頂です。一瞬の間で、「こいつミスったんじゃないか?」と焦らせる際どさ。天才的な母性本能のくすぐり方です(注・僕は男です)。RollingStonesって、何時になってもなんかやらかしそうで怖いんだよね。それが魅力でもあるんだけど…。


 Brown sugar~Start me Up~It’s only rock’n rollと続く至福の時間。「あいやいや!あぁぁ~いのぉぉう!▲□☆※▽¨★!ぃえすあぁいどぉぉう!」飛び跳ねまくって、はじけまくって、老いも若きも一体となる4.5万人。端から端まで走りまくり、煽りまくるMick。答える観客。コラージュ写真に重なり、登場した電光スクリーン。4人が大写しに画面に登場。ロックンロールサーカスここに極まれり。もう最高。


 オープニングから立て続けに3曲演ったところで、小休止。

 「ヨンドメェェノトウキヨドウムダァァァア」

 「ツギハシンキヨクディス」


 Mickの拙いニホンゴに続いて、「40Licks」からDon’t Stop


 この曲も結構好きだけど、昔のStonesの音色とはちょっと違うよね。「SteelWheel」辺りからなんだか若干聴きやすい、Popな曲が増えた感じがするんだよな。「Boodoo~」はゴリゴリ昔に戻ってたけど、今のStonesが遣りたい方向はこう言う向きなのかもしれない。昔が好きなStonesファンにとってはさびしいけど、これはこれで、Stonesらしい気がする。



 そんな理由かわかりませんが


 既にお客さんがバテはじめました。


 これもStonesのコンサートならではの光景だろうな。平均年齢が圧倒的に高い故か4曲目にしてお客さんの腕が上がらなくなってきました。全体としてはもちろん、コール&レスポンスはしっかりしてるんだけど、個々で見るとなんだかレスポンス率が落ちてる気がする。まあ、僕の周りの席だけなのかもしれないけどね。でも、ライブが進むに連れて、ノリまくって聴いてるお客さんより、暖かく見つめてるだけのお客さんが多くなってたのは確かです。うーむ。これも醍醐味か?

 でもそれを考えると更にMickの体力に驚かされる。二時間走って歌って、それでも息を切らさないMickは大したもんです。惚れます。


 次に、「All Down the Line」を演奏して、またもやMickのニホンゴ「ツギハ●※★×ナキヨクディス」


 おいおい、どんな曲だよ。ニホンゴわからないよ。と思った瞬間、聞こえてきたのは

 「エィンジィ…ァイイィンジィ」


 おい、「Angie」、アンジーかよ!思わず涙。これを生で聴けるとは。なんだかちょっと前になんかのドラマで使われてたらしいけど、その影響かな。歌詞を覚えてなかったので、一緒に歌う事は出来なかったけど、その分Mickの歌に聞きほれてました。


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 気がついたらMickの手元にブルースハープが。


 そう、これだよ。これを演ってくれなきゃ。是非とも生で聴きたかったんだよ「Midnight Rambler」

 Mickのハープとキースのギター、そしてサポートのキーボードが絡み合いセッションを繰り広げてくれました。やっぱりねぇ、すき放題ソロをやってくれるこういう曲、好きです。どう展開するかわからない、これがライブの醍醐味だよね。ぞくぞくします。


 Mickは真中の花道に降りてお客さんと代わる代わるタッチ。もみくちゃに殺到するお客さん。

 花道を戻っていくMick。そしてその様を不安そうに見つめるキース。にも関わらず、ステージまで戻るとさっさと背を向けてしまう二人。


 いや、あの、そのね。僕は男の子だしいわゆる「やおい」とか「ボーイズラブ」な事は全然知らないし、興味も全くないんですがね。

 でもミックとキースのステージ・インタープレイはめちゃめちゃリアルにカップリングできると思うんですが、世の婦女子のみなさん、如何ですか

 口では反目し会う二人、でも一旦ステージに立つと、ぴったり息の合ったパフォーマンスを見せる二人。目で行う会話。すれ違いざまの小さなアクション。書こうと思えばこんなに書きやすい、素敵なカップリングは無いと思います。どなたか書いてみたらどうですか?でも60歳近い男のやおい本など僕は絶対読みませんが。


 話それました。


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 これもLiveのお決まり「Tumbling Dice」を演奏してみんなで大合唱。


 続いてキースのソロコーナー。


 ギターを左側に置いて、渋い歌声を披露。「Slipping Away」「Happy」…なんだか、昔聞いたSteelWheelTourの時のHappyはまだ若若しかった気がするけど、今回のHappyはちょっと達観入ってた感じでした。枯れたHappy、つうかアルバムに忠実な感じに聞こえました。サビの「ハッピー」の部分も、前はシャウトしてたのに、今回はかみ締めるように歌ってたのが印象的でした。それにしても、Mickが舞台に居るのと居ないのでは、全くカラーが違って見えるのね。いや、キースが悪いわけじゃないんだけどね。キースの舞台も凄いんだけど、あの生命力の塊のようなMickの存在感は、居ない時に改めて感じます。


 キースの「Happy」が終わった時。


 流れてきたのはボンゴらしきパーカッションの音。




 そうそう。これだこれ。これやってもらわないと。



 僕の大好きな、名盤「べガーズ・バンケット」のオープニングナンバー!



 「Sympathy for the Devil」

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━ !!!!




 

 ええそりゃもうノリまくりましたよ。そろそろ年なもので体力が追いつかなくなってきましたが(ミックを見習いたい)、ここぞとばかり、体力の続く限り、あの独特のリズムに乗ってふーふーふーふー叫びまくりました。(曲知らない人には全然わからないな。ごめん。と言うか聴いてください損はさせないから。)


 なんと言うか、この曲を聴くと生きてる気がします。


 Sympathy、は邦題で「憐れむ」って訳されてるけど、微妙に違うイメージを感じてます。なんと言うか、ともに生きてる悦びとか悲哀とか、なんかその辺をごっちゃにした連帯感、見たいな感じで。昔はねぇ(つうか僕が生まれる前だけど)、この曲を演ると何かが起きる、とかなんとか言われて、実際にコンサート会場で殺人が起きた事もあるらしいけどさ、そんなにデモーニッシュな感じしないんだよね。結局はどうなっても生き延びる人間賛歌というか、しぶとく生き延びるRollingStonesを体現してる感じで、好きなんだよねぇ。パーカッションの音も、バッキングピアノの音も、後半のうねるギターの音も、楽しそうでさ。


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 そう、Stonesの凄さの一つはこの「しぶとく生き延びる事」だと感じてます。


 何事でも、続ける、ってのは、相当な根性と体力と、更には運も必要だと思うわけでして。それが更に複数名によって成り立つものならなおさら。それはバンドとか劇団とか、団体に参加してみればすぐにわかる事。


 「引き際を美しく」とか「早逝の天才」とか、どうしても辞めたり死んじゃったりした人や団体を美化するトコロがあるけど、それってなんだかズルイって感じるんだよね。死人に文句言ったってしゃあないもん。「あの時、彼らは凄かった」ゆうたかて、今まだもって凄い人と比べる事できないやん、てな気がして。


 うん、確かに、絶頂期に辞める覚悟の良さ、てのもある種の美しさだとは思うけど、結局はラクな道、て気がしちゃうのよね。ぼろくそに言われても、「昔のほうが良かった」とか言われても、もう辞めろとか言われても、「好きでやってんじゃー」という一点で延々とやり続けるその根性、それがとにかくすばらしいと思う。

 何事も、辞めちゃったら重圧からは開放される。Mickは40年もStonesのフロントとして、その重責を果たしながら、「もう辞めたい」とか「飽きた」とか言わないで、延々とその世界的な重責を背負って、且つ辛そうな顔も見せずに淡々とこなしている。そのかっこ良さったら、あんた、無いよ。おまけに運まで味方につけてるのか(あるいは運が無いからなのか)、途中で殺されたり事故死したりして伝説になる事も無く、ひたすらStonesをやり続けている。これって、えらい事だよ。

 また、その上で一線級の実力を持ちつづける事なんて、奇跡に近いです。つか、衰えを感じて辞める人達も多いんだろうけどさ。衰えず、辞めず、周りに押し潰されず続けるなんて不可能に近いことを平気でやってのけるStones、そこが一番、かっこいい。


 …これは本当に妄想、なんだけど、初代リーダーのブライアンが死んだ時の亡霊が、彼らを辞めさせないようにしてるんじゃないかな、なんて思ったり。ブライアンの屈折した思いが彼らをStonesに縛り付けて、死んで楽になる事すら許さなくしてるんじゃないかな、なんて思ったりします。


 そうそう、ブライアン在籍最後のアルバムでもあるんだよね「べガーズ・バンケット」。


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 なんて事を思いながらふーふー言ってました。


 そのうちに彼らは真中の花道を通って、僕のすぐ左側、5m四方の台へとやってきました。


 え、うそ。


 こともあろうか、手を伸ばせば直ぐ届きそうな、ほんの数メートル先に、ミックが、キースが、チャーリーが移動してきました。


 なんとまあ、僕のすぐ横にあった5m四方の台は、なんとステージだったのだ!(つて、ドラムセット置いてあるから最初からわかってたんだけどね。)


 東京ドームクラスのコンサートだから、正直、彼らの姿は豆粒にしか見えない、とあきらめてました。それでもミックは独特の存在感でものすごく大きく見えたし、その他のメンバーも、肉眼でそれとわかる姿を拝む事が出来たので、それはそれで凄く満足してました。


 でも、それだけでなく、僕の眼と鼻の先に彼らが!!


 今までのステージが豆粒なら、Bステージでの彼らは仏壇ぐらい大きく見えます。というか僕の肉眼でキースの皺が、ミックの唇が、チャーリーのカッパ禿が、はっきりと見えているのです。


 もう、Sympathy for the devilでかなり参ってる僕は、更に壊れました。隣で見てるMIYUKIさんも壊れてました。


 「みぃっくぅ~!!!」

 「っきぅぅぃぃぃ~す~!」

 「ろんんんんんにぃぃぃぃぃいいいいい!!」

 「っちゃぁぁぁぁるるるいいいいいいいぃいぃぃい!!」

 おまけに「だるぃぃぃぃいいいるるるるる!」



 二人とも叫びまくりです。もう逝ってます。いや、逝っても良いです。目で見るだけでエネルギーを注入されてる感じです。目の前でミックが踊ってるよ!キースがギター弾いてるよ!と、それだけで幸せでした。何の曲やったか覚えてないほど自分でも感動してました。(「Manish Boy」やったのは覚えてます。)年甲斐も無いと言うか、30近い男の反応ではないですね。ちょっとだけコンサートで失神する女の子の気持ちがわかりました。



 //////////


 正気に戻ったのは、彼らが元のステージに戻った時です。



 あの不安感を掻き毟るイントロが流れてきました。



 この時はまだ、イラク攻撃も始まってなかったけど、この曲を聴くと、今はどうしても連想せざるを得ません。

 「Gimme Shelter」


 女性ボーカルのリサの大迫力。圧倒される壮大さ。この曲は本当にスタジアムで聴くとスケールを感じます。正直、怖かった。ミックの存在感も、この時ばかりはとんでもなく恐ろしいものに感じました。うーん、やっぱり曲のカラーによって、スタジアム向きとか、ライブハウス向きとかあるよね。逆に「Midnight Rambler 」なんかは、ライブハウスで聴いてみたいよね。あと、あの曲もスタジアム向きじゃないんだけどな、でも今日もやってくれないかな…、そう、あれあれ。Honkytonkピアノの音色とけだるい感じのあの曲よ。


と思ったら。


カウベルのイントロは無かったけれど。


あ、そうそう、これこれ。これだよー。Stonesと言えば、これを聴かせて欲しかったんだよー。イントロのギターだけでぞくぞくします。


もう一回やっても良い?




 「Honky Tonk Women 」

キタ━━━━

━━(゚∀゚)━━━

━━━━━ !!!!




 

もう大好きですこの曲。けだるさと言いけだるさと言いけだるさと言い本当にけだるくて良い感じです。この味、このノリ。Stonesだからこそ出せるルーズさ。メロディが良いとか、テクニックが巧いとか、そういうのとはまた違う、ひたすら「味が良い」としか表現のしようが無いフレーズ。僕がカラオケで歌った時は一発で引かれましたが。

 それにしても、この曲を歌ってる時のミックの男っぽさ、やらしさも相当なものです。

 この曲の間、巨大スクリーンにはアニメチックなボンデージの女の子がStonesマークの舌の上で悶えまくるっつうHな映像が流れてましたけど、この映像とミックの声の絡み具合ったらもう。びんびんです。映像だけならまだしも、ミックの声が更に卑猥に鳴り響いています。
もう、びんびんにならないほうがおかしい。半分が男として、その半分がびんびんになったとしても、1.5万人がびんびんです。


…やな想像しました。


/////////


また余談だけど、Stonesのイメージって、僕の中ではHonky Tonk Womenに代表されるタイトなリズムにルーズなギターの、ブルースバンドなんですよね。

 んでもって、Stonesには、唇が半開きになったグラマラスなアメリカンボディの女性が良く似合う気がします(注・Stonesはイギリスのバンドです)。ふと、演奏中周りを見ると、やっぱり、その、なんだ、おっきい女の子や(何がって聞くな)、良いラインをした女の子や(何がって聞くな)、大・小・大といったスタイルの女の子(何がって聞くな)が沢山居て、それがまた場に似合ってるんだよね。どっちかと言うと僕は清楚なイメージの女性も好きなんだけど、Honky Tonk Womenを聴いてると、でっかいのに押し潰されたい気持ちで一杯になります。いやー、いいね。It’s a Hoooonkytonk, Hooonkytonk,Women!!!


 最後に、スクリーンに映し出された会場の女の子に、Mickが

 「カワイイネ。デンワバンゴウオシエテ。」と口説いてました。ご愛嬌。


///////////


 そして一気にラストへ猛突進。


 「Street Fighting Man」「Satisfaction」


 もうこの辺になるとリフだけで白飯5杯はいけます。力の限り踊りつづけます。


 この辺はもう覚えてるとかではなく、身体が動くままに任せてた状態です。途中で息切れしてたお客さんも、もうラスト間近と言う事を感じとって、自殺行為のように叫びまくります。でもやっぱ、「Satisfaction」はみんなで力いっぱい叫んでこそ気持ち良いよね。あいきゃーんげっのー!


 
「Jumpin’ Jack Flash (encore)」


 どこからがアンコールだったのかわかりませんが、狂ったテンションのままおなじみのリフへ。ここでもみんな叫びまくりの踊りまくり。
この辺の曲は、もう曲がどうこうというレベルじゃありません。血です。血。リフを聴いただけで身体が動かないといけません。これこそが魂です。
うおおおぉぉぉおおおJumpin Jack Flaaaash It’s a Gas Gas Gaaaaaas!!





///////////


 そうこうしている間に、コンサートは終了しました。もうへとへとです。見てるこっちがへとへとなのに、ミックがけらけら笑ってるのは正直びっくりです。もう最後は、あがらない腕を前に出して、とにかく拍手拍手。すばらしい時間をありがとう。


 最後に4人揃って、深深と礼。個人的にはダリルも居れて欲しいなーと思ったんだけど、彼はさっさと行ってしまいました。


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とにかく、僕はRollingStonesを見ることが出来ました。

それだけでも、幸せです。

最高です。

生きてて良かったです。

うーん、なんだろね。コンサート後にこれだけすがすがしい気持ちになったのって、久しぶりです。ありきたりな言い方だけど、すごく楽しかった。気持ち良かった。当たり前のコンサートを、当たり前のようにやるStonesのコンサートは、それだけでエネルギーになるのかもしれないなぁ。やっぱり良いです、Stones。聴きつづけてて良かった。本当に、そう思う。




It’s a only Rolling Stones…




But I like it!!

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