越中おわら風の盆

 いつの間にか9月。今年も富山県八尾町では、おわら風の盆が行われたようですね。


 かく言う私も富山県民(千葉在住)、おわら風の盆の話を聞くと、ふと故郷を思い出します。っても、実際に見たことないんだけどね。八尾って、福岡町からえらい遠いのよ。車でも一時間以上かかるし。高山線なんて修学旅行以来乗った事ありません。


 小学校の時に民謡大好きな社会科の先生がいて、その先生から強制的に踊りと唄を仕込まれた記憶があり、今でもおぼろげながら踊ることができます。男踊りと女踊りで形が微妙に違い、それぞれ種まいて稲刈ってカカシのポーズしてと農民の一年を象形文字のように踊りまくるモノだったと覚えています。当時は「なんやっとんがやろ。こんなん覚えとっても何の役にも立たんちゃ。はよ終わろまいけ。(富山弁)」とダラケまくって舐めまくってましたが、全国的に人気のある祭りらしく、ほんのちょっと踊りを覚えてるというだけでも希少価値が出てきたみたいです。だからって踊らないけどね。某富山に住む友人がおわらを見に行ったそうです。彼の感想の又聞きでは「25歳以下の生娘(?)祭典。うなじの部分にほんの少しだけ結い乱れた髪の(以下略)」という事ですが、はっきり言おう。それはまだおわらの見方が甘いぞ。富山の祭りがそんな軟弱な訳がない。富山には雪と酒と魚と祭りしかないんですから。祭りにかけるエネルギーはどこにも負けません。個人的には血沸き肉踊るけんかやまが最高だと思っていますが、おわらだって相当なものですよ。



 おわら風の盆とは、八尾町という小さく坂の多い街を、ひたすら行列になって歌い踊り続けるという祭りです。女性たちが笠を被ってうなじの部分にほんの少しだけ結い乱れた髪の(略)という優雅さを表向きは保ってますが、本当に風の盆の、風の盆たるゆえんは別のところにあります。


 現在はどうなっているのか知りませんが、旧来、風の盆はその開催期間(9/1~9/3)、ひたすら寝ず休まずに踊り続けるというものでした。はっきり言って気違い沙汰ですね。ゆったりしたリズムの舞を、ただただ何千回も何万回も繰り返す、夜を徹して繰り返す、昼になっても繰り返す…その中で宇宙と交信するところまでイッてしまう祭りだったそうです。いいですね、日常から脱して、気違いになることこそ祭りの本道。観光客のための祭りでないのがいいですね。


 それゆえに、本当のおわらの姿を見たければ、4日の深夜から早朝に掛けて八尾町を覗くのが良い、と僕は親に教えられました。行った事は無いのですが。ええ、眠いので。

 薄く朝日が差昇って来て、東の空が白み始めた頃に、体力の限界をとうに超えた生娘の行列が、笠の下から焦点が256年後より先にしか合わなくなった目を覗かせながらデンジャラスマインドに舞い狂って静かに進んでいくという、脳がバーストしたゾンビ映画のような光景を見ることができたそうです。これぞおわら風の盆。けんかやまを動の祭りとするならば、風の盆は静の祭り。静の内にも溢れ出るエネルギー。お金やビジネスでは作り得ない非日常的空間。ただ「わーきれいな踊り」というだけなら、ここまで世間にも広まりはしなかったでしょう。もし観光客として見に行くとしても、3日3晩徹夜で踊るつもりで見に行かないとおわらを知ったとは言えません。さあ富山在住一児の父となった友人 呑んだくれ君、見るだけで絶賛するのはまだ早い。来年は君も有給休暇をとって参戦だ!僕は行きませんが。

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