乳房

もういっちょ別ページに格納。なんか最近変なんです。ええ。狂ってます。狂いだすとこんなの書き始めます。自分でもはじめて知りました。やってる事が若臭え。くずれ文学青年臭え。こんなにシリアスなのは好きじゃない。ぼけはげ早漏言ってる方が100倍楽だ。ぷぅ。


 満月の夜には、いつもナオミの部屋に居る。出窓に取りつけたカフェカーテンの向う側、満月は、丸く微笑んでいる。


 いや、満月の夜に限らない。いつから居るのか判らない。付き合っているわけでもない。でも気がつけば、僕はいつもナオミの部屋に居る。明かりもつけず、BGMも無く。ただあるのはソファベッドとナオミ、そして壁にかけられたデ・キリコの無機質な画と、月明かり。


 僕はソファベッドに深く腰掛け、ナオミの肩に手をかける。華奢な体つき、官能的な鎖骨、その奥に眠る豊潤な肢体。肩に指先が触れた時、ナオミの口元が柔らかく微笑んだ。
 僕の指はブラウスの紐を手繰った。そして片方づつ、紐を肩から落とした。


 月明かりに照らし出された乳房は、月と同じように笑っている。匂い立つような清涼感。彼女の胸には、ふくよかに実った柑橘系の果実が二つ、大きく甘く蜜の溢れる団子が二つ。或いは誇らしげな満月が二つ。僕はナオミを抱き寄せ、その満月のような乳房を掌で確かめる。ナオミは、自分の乳房を愛おしげに眺める。母のような視線と微笑を乳房に向ける。僕の大きな掌と、捕まれた満月。ナオミは、慈しむような視線を乳房に向けたまま、その白い指を僕の掌と乳房の間に滑り込ませた。


 ナオミと二人で、将来の事、テレビ番組の事、今日職場であった事、そんな他愛無い話をしながら、僕らは乳房の上で、満月の上で、お互いの指先を絡めていた。


 ナオミが戯れに、僕の耳たぶを噛む。そしてつぶやく。「とうとう詐欺師になる決心がついたの?」

 僕は何も答えない。答えられない。彼女の意地悪な微笑を前にして、返事を返す隙が見当たらない。なんと答えても、彼女はそのまま消えてしまうだろう。或いは月へ帰ってしまうのか。


 返答出来ない僕は、ナオミの満月に頬を寄せて接吻する。ナオミは目を閉じる。静かに、月の世界へ誘われてゆく。僕も目を閉じて、目の前の満月を味わう。二人の指は、離れないように絡みつく。



 そのまま、どれ程の時が過ぎただろうか。

 カフェカーテンの向う側。空で微笑んでいる満月は、今でもやっぱり、丸かった。

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