棋士の本

 棋士の本が好きです。
 将棋、滅法下手なのですが、まさに「下手の横好き」。先を読むという能力が無く「とにかく特攻」「手数だけやたらに多い」というのが持ち味の僕にとって、全く持って正反対の資質を求められるこのゲーム。苦手すぎるほどに苦手だからこそ、学ぶものも多いというか、この世界で生き残る人たちの哲学に憧れを持ってしまうのです。
 そういう訳で、将棋うち、いわゆる棋士の本は僕にとってとても面白く、また学び多い書物なのです。
 他には数学者の本とか、音楽家の本とか。騎手の本も好きですね(時々軽佻浮薄なのもありますが)。別世界の人たちの言葉は、とても響きます。

 まずはこちら。10年以上前からずっと手元で読み続けている本です。米長名人は毀誉褒貶の激しい人ですが、僕は非常に好きです。生きる上で避けられない勝ち負けの波にもまれないために、どう進めばいいのか、この本を元に僕は20代を乗り越えてきました。借り方でなく、貸し方に回る。舟に乗れる人数が決まっているのなら、全うに落とすべき人を落とすのも義理の通し方。そして米長哲学。これからも何度も読み返します。

 一大名人、大山康晴。とても真面目で、誠実で、それでいて勝負師として一流を貫いた大人物だと思います。なので、彼の書く文章は非常に理路整然としていて、筋が通って読み易い。その易しい文体の中に、プロとしての厳しさが随所に現れていて、身が引き締まります。

 その大山康晴と昭和時代に名勝負を重ねた名人升田幸三。これまた生き方も文体も洒脱で色気があって、香気にあたります。広島弁口調の文体に、生きる上での指南。ひょっとすると大山名人の方が正攻法としての生き方を記しているのかもしれませんが、僕は正直、升田幸三の方が好きなんですね。オシャレだから。こういう語り口調の出来る大人になりたい。そのためには修羅場をもっともっと体験して、勝ち進まなければならない。

 上3つと違って、団鬼六がまとめた、昭和50年代に活躍した真剣師(賭け将棋のプロ)小池重明のドキュメンタリー。もちろん違法行為・アウトローそのものの生き方ですが、何よりも壮絶。絶対真似できない。そして、人としての生き方を真剣に考えさせられる。とにかく、壮絶。賭け事の世界、アウトローの世界で生きるということがどういうことなのか。自分は何をもって生きているのか。名文家、団鬼六氏の文章も巧みで、一気に曳き込まれて読みきってしまいました。
 今日は本のご紹介まで。また良い本に出会ったら紹介します。
 加藤一二三の本が読みたいなぁ。

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