ファストファッションならぬ「ファスト動画」
世の中には「ファストファッション」が並んでいる。
ファストファッション=最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態。
僕もよく利用している。もちろん日々ファストファッションばかりではないが日がな散歩するにもイッセイミヤケというわけにもいかなかろう。
一着も持ってないけど。ええ。
便利です。ファストファッション。僕は服飾について無頓着だけど、とても機能的なものだとは理解しています。
そして、今この世界には、数多くの動画が街に溢れている。
ファストファッションを作る方にも矜持はある。
ファストファッションを作りながらブランドデザイナーの様な顔をすると笑われてしまう様に、
ファスト動画を量産しながら「クリエイター」を名乗ったら恥ずかしい、という社会にしたいのだ。
ファストファッションの企業が一気に閉店した様に、ファスト動画もどこかで飽和するだろう。消えはしないが。
僕はファスト動画の会社を立ち上げて大儲けしようなんて微塵も思っちゃいない。
それだけは口を大にして伝えておく。
ただ同時に、ファスト動画のような存在があってくれたからこそ、独立一年目の僕が生きてこれたのも事実。嫌っちゃいけないんだ。
ファストファッションとデザイナーズブランドは明らかにコンセプトも商品も違うもの。ただ共存はできる。
同様に、ファスト動画と映像作家・クリエイターの動画も明らかに違う。でも、共存はできる。
…というか、最近の言葉の使い方を見てると、ファストファッション=動画、デザイナーズブランド=映像、の様に思えてきた。
自己認識のズレは、ちと、恥ずかしい…かな。
ファスト動画の育成学校をやってるつもりも、全くないし、これからもそこを育てるつもりはない。どんなに流行になり、どんなに大きなお金が入ってこようとも。
きちんと、コンセプトを練り上げ、プロのディレクターがシナリオ設計し、美しい画作りに妥協なく、一フレームたりとも無駄を入れず…
その上で、万人が手にできる低価格の動画制作ができる環境ができた時、それは素晴らしき「ファスト動画」の世界になるだろう。
ファストでない動画は、更なる高みに到達するだろう。
ただ
知識のない代理店が「鉛筆あれば書けますから」と絵コンテを書き、
例えば一眼カメラをただ所有している、使うのは月に一、二回という方が撮影をし、
編集ソフトを扱えるだけの方が編集をした動画を
ファスト動画とさえ、名乗ってはならないと思うのです。
それは「世に出してはならないモノ」なのです。
結論
作家性を込めた映像も素晴らしい
作家性が無くとも、「万人のために」と精魂込めてファストな仕組みを作り上げられて出てきた動画も素晴らしい
逆に
先人たちの知見に敬意なく
ただお金が稼げるから、と
効率よく作ったものは
美しく、ない。
それに尽きるんじゃないか、と思っています。