傲慢読書情報

リアルスティール

マシスンってあまり表舞台に立たない作家なのよね…。面白いのに。★★が珠玉。そして主題となった短編「リアルスティール」こそがヘミングウェイから連なる米文学における男の系譜。僕はこの世界が好きでたまらないのだ。

 

ルネサンス 冨山房百科文庫 (9)

美学の批評においては、対象をあるがままに見るための第一歩は、自分が受け取った印象をあるがままに知り、それを識別し、はっきりと感得することである。美学の批評の取り上げる対象ー音楽、詩、人間生活のなかの芸術的な洗練された形態ーは、それぞれ力を内蔵する容器であり、自然の産物とおなじく、それぞれの価値や性質を備えている。(序論より)

夜のガスパール―レンブラント、カロー風の幻想曲 (岩波文庫)

僕はもちろん、筒井康隆からここにたどり着いているわけなのだけれども、それでも散文詩を眺めるときには原語の楽しみを知り尽くしてからでないとやはりその意図は伝わらない。英文学においては柳瀬尚紀御大がものすごくこの方面を開拓してくださったけれど、その域でこの世界を広げてくれる天才はなかなか出てこないものか。もちろん及川教授の訳も大変素晴らしいけれど。そして、この世界にかけては、どうしても澁澤龍彦様の影が見え隠れしてフラットに見ることができないのだ。

傲慢読書情報

代はもう一度レタリングの必要性が出てくる。必ず。

大東美術研究会 集文館 (1989-07-01)
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これだけ情報が安価に手に入る世界では閉ざされた情報は存在しえなくなり、また労働力に対する意味も薄くなる。
知的産業、感情労働においては人を雇用して労働力を確保するよりも自分で知識武装・技術習得したほうが戦略的に優位だと思っているだけなのです。
(加齢や健康状態、万一の保険を加味しても、僕の年齢ならまだ勝ち目があると読んで掛けるのです)

そして、法によって雇用(解雇の難度)が守られれば守られるほど、この合理性が強固になるは自明なのです。

なので、自分自身は雇われる気がないのに「こようをまもれー。せいしゃいんという制度をなくすなー」というスタンスなのです。
だってその方が僕は有利に立てるのだから。思いっきりポジショントークだよ。当たり前じゃないか。

数の論…

ジョセフ E.スティグリッツ, カール E.ウォルシュ 東洋経済新報社 (2012-03-23) 価格:3,024円
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非常にベーシックなお話。にして、全く覚えてなかった話。

ジョセフ・アルバース(Josef Albers) ビー・エヌ・エヌ新社 (2016-06-24) 価格:2,592円
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〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則

新卒で入社した会社は、それこそ本当に未来志向で、今でいうベンチャー気質に溢れていた。まだどのようにインターネットとPCを使えば良いかわからない中で、NYの事務所とリアルタイムのやり取りをして、リュミエール兄弟時代からの映画アーカイブデータを構築したり、世界中の野生生物映像をストックしたり、日々「これまでにできなかったこと」を日々行っていた。もちろん、僕は新人であり、それが本当に「革命的」なことだとは気付かず、「大人ってこうなんだ」という無垢の状態で受け入れていたのだけれど。当時数千万円した(そして容量が2GBしかなかった)映像編集システムを好き放題いじらせてもらったなぁ。毎日がスクラップ&ビルドであり、プロトタイプを思いつくことや勝手に何か作り始めることにも寛容で、速度と好奇心と現存否定が常に求められていた。そして、その場所で社長に紹介された「このポリシーをもつ素晴らしい会社」に、僕は2005年から8年間務める縁をもらい、今の僕の仕事スタイルにつながっている。

この本の原題は「Inevitable」。インターネットの次なのかどうなのかは分からないけど、あの当時と同じように(否、あの時から、そしてその前からずっと続いているのだ)、日々が変わっている。あの頃の革命は「情報の接続」〜「データアーカイブ」にポイントが置かれていた。それは2005年ごろから更に変化し「プロセスの記録化」「情報の取捨・検索性」を経て、今はその潮流が「プロセスそのもの」になってきた、と思う。人の本質と各人の物語はそのまま膨大な記録として残され、何を作ったのかという「プロダクト」よりも作り上げる「プロセス」が人に感動を与える(今までもそうだったけどね)。
そう、感動、なのだと思う。これまで、マズローではないけれど、身元の安全や快適を求めて発展してきた技術は、感動とアクセスできるように変化してきたのだ。そして、それはこれまでの大衆化に必要だったテンプレート化という手法ではなく、全くのオリジナルとして存在・表徴できるようになってきたのだ。
というのが僕の見立てと感想。

まあ、生きてきて、よかったと思うし、これからどんどん生き易い時代になっていくと確信している。少なくとも僕は。夢と希望にあふれる世界だと、信じてきて良かったし、それを後押ししてくれる書籍だった。

ケヴィン・ケリー, 服部 桂 NHK出版 (2016-07-23) 価格:2,160円
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スピノザ―実践の哲学 (平凡社ライブラリー (440))

バルト→ドゥルーズ→スピノザ。
ドゥルーズの語る「差異」について考えるとき、どうしても再帰的な自己の能動・受動の関係に目を向けなければならない。
そして「エチカ」に描かれた万物因子の汎神論に立ち戻るとき、僕はまず何より自分の本職である映像編集と重ね合わせた姿を考えてしまうのです。
万物には必ず究極的な原因がある。それは物体に限らず、物語にも。それこそが実態であり、神であり、自然であるとスピノザは語る。
映像を重ね合わせていくときに、そのカットの並びには必ず因子がある。それは巨匠が積み重ねてきた理由や番人への浸透といったものに限らず、決定された因子がある。それは撮影と編集、という技法的なものに依らない、自己触発的な再帰性をもった物語の表現における「本質」が。それがいったい何なのか、未だに僕はわからないけれども。そして、この部分について深く考えると、やはりその先にはロランバルトが存在している。これもまた輪廻の物語ではないだろうか。

G.ドゥルーズ 平凡社 (2002-08) 価格:1,404円
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現代思想史入門 (ちくま新書)

なんで今更現代思想史やねん、というなかれ。
僕はこの本を「スゴ本」で知ったのだが、その書評の通り、想像つかない切り口からの俯瞰視点が面白い。歴史順、影響順ではなく、あくまで精神・生命・歴史・情報・そして暴力(!)といった区分けで淡々と描かれている。
一つの物語として読んでいくことも可能で、西田幾多郎〜文化人類学〜デリダ〜ハイデッガー…からのマルクス主義とルネサンスといった縦横無尽の八艘飛び。まるで、山下洋輔の「ドバラダ門」を読んだ時のような時間混乱感覚にある種の陶酔を覚えるのです。

船木 亨 筑摩書房 (2016-04-05) 価格:1,404円
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クーデターの政治学―政治の天才の国タイ (中公新書)

92年、僕はもちろん生きていた。あの頃、僕はタイに気持ちを向けたことがあっただろうか。89〜92年の東ヨーロッパ(チャウシェスク政権含む)、中東、様々な現実があの頃には詰まっていたし、今もそれほど変わらない密度で、世界は熱を帯びている。

(以下引用)
民主主義が続くと、大衆が無制限に自分たちの要求を押し通す結果、無政府状態になってしまう。その混乱を収拾するために独裁者が現れる。独裁制はやがて君主制になる。王政が続くと、その権力はやがて貴族に、ついで権勢家、資産家に分散されていき、やがては民主主義となり、それがまた無政府状態に堕していくーという循環である。
(引用終わり)

4000年くらい前からずっとこのまんまやないかーい。この愛おしき人間社会。そして今も、その連続時間の中で僕たちは生きているのだ。この世界を愛してやまないのだ。

岡崎 久彦, 横田 順子, 藤井 昭彦 中央公論社 (1993-09)
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梅棹先生と勝負しようなんて気は更々ないけど、この方の言語興味は底知れない。マークピーターセン氏、千野栄一先生と並ぶ言語エッセイの名著。
何より、書いてる本人が「ほら!これ!面白いでしょ!」というノリでチベット語から朝鮮語バスク語ドイツ語クロアチア語その他あらゆる言語を楽しそうに語ってくる。
仕事で英語が必要とかそんな小さな話じゃない。言葉は最高に楽しいクリエイティブツールなのだ。

 

http://mediamarker.net/u/taskyamamoto/?asin=4004302056

偏狭読書情報


どういう思想かに関わらず、暴力について知識や体系を得ることは、国家にとって非常に不都合だ。
国民には、暴力を恐れ、無知性に感情的に、甘んじて受ける側に立っていてもらわないと困るのだ。
国家を壊すものはただ一つ、暴力なのだから、対抗して彼らは公認暴力装置を維持し続ける。
別に国家でなくとも、企業でも家庭でも、管理のある組織なら全部変わらないけどね。

僕と地縁のある伏木出身の文人、堀田善衛。幼い頃、僕はこの文人に会ったことがある・・・らしい。覚えてないけど。生家を訊ねたこともある。彼が、伏木の町を飛び出して中国、インド、そしてスペインへと、風来の日々を送り続けていた意味を改めて思う。そこでにじみ出る堀田の視点が、常に国府浜に立脚した海の姿からのずれ、ギャップから日本の太平洋を見、インド洋を見、スペインでは湾を眺めている。この小説の中で描かれているものは、全て伏木からの距離感、伏木との差異を起点にして世界を眺めている。僕はまさに、伏木を知るものとして世界を見ていきたい。堀田の歩んだ道をトレースしたい。伏木が根っこに有る文人達が登場してくれることを望みつつ・・・。

偏狭読書情報


ビール飲みながら読んでたら一気に進んだ(理解してないとも言う)。
そう、この、理解してないということ自体を検証するのがこの本でした。我思うからと言って我あるとは限らない。
結局これがフッサールの現象学の基礎になるのだけど、前提に精神がおかれることがどうにも僕には落ち着きが悪い。これで僕に知性があればハイデガーに進めるのだろうけど、実存主義はまだまだ手ごわい。大学時代に手抜いたからね。
【以下引用】
この具体的な可能性を立証すること、つまり実際的な遂行可能性は-たとえ、当然のように、無限のプログラムと言う形態においてであるにしても-、必然的で疑うことの出来ない始まりと、同様に必然的に繰り返し実行される方法とを立証することを意味しており、この方法によって同時に、そもそも意味のある諸問題の体系が粗描されるのであった。