情熱の花





 尋ねたい。何故なのかと。



 青春時代の馬鹿なエネルギーは何処へ消えていくのかと。



 「創り出そう」「成し遂げよう」と言う崇高かつ偉大な情熱は何処へいってしまったのかと。





 尋ねたい。何故なのかと。



 何故日常に追いやられてしまうのかと。



 あの日見たものは幻だったのかと。











 タクミ 「最近楽しいことねーな。」

 ユキオ 「全くだな。」

 タクミ 「お互いもう28歳かぁ。」

 ユキオ 「ああ、就職もして、結婚もして…。」

 タクミ 「なんか在り来たりの人生だよなぁ。」

 ユキオ 「…同感。」

 タクミ 「大学時代はさぁ、なんか、こう、いろんな事に盛り上がって

     いたのにさ、何時の間にかそんな事もなくなって来ちゃったなぁ。」

 ユキオ 「毎日会社と家の往復だけで。」

 タクミ 「帰ればかみさんとの晩酌で。」

 ユキオ 「朝になればそのまま会社。」

 タクミ 「あーあ。」

 ユキオ 「最近、お前影が薄くなってねーか?」

 タクミ 「え?そうかな?」

 ユキオ 「…同じ毎日ばかりだからな。仕方ねえよな。」

 タクミ 「そういうお前だってなんか存在が薄いぜ。」

 ユキオ 「…そうかもな。このまま、何にも無く死んでいくのかな… 」



 ミチヤ 「よお

 タクミ 「おお、ミチヤ。どうしたんだよ。久しぶりだな。」

 ユキオ 「なんか変わったよな。見た目からしてすごい

     エネルギッシュだよ。」


 ミチヤ 「そうかな?今、会社帰りにバンドやっててさ。

     なんかすっげえ楽しいんだよね。お前らこそ何しょげた顔

     してるんだよ!


 タクミ 「いや・・・なんか日々に疲れちゃってさ。」

 ユキオ 「ああ。会社と家の往復だけでさ。…趣味も無い毎日で。」

 ミチヤ 「しゃあねえなぁ。何老けたこと言ってんだよ。

     ォラ、もっと元気出せよ!


 アキラ 「オウ。元気か?みんな!」

  タクミ 「おお!アキラ。お前も来たのか。…輝いてるなぁ。」

 ユキオ 「つうか輝きすぎてて見にくいぞ。」

 アキラ 「いやぁ。もう、毎日楽しくってサア。」

 ミチヤ 「へえ、お前も何か生きがいを見つけたんだろ。

     楽しくってしょうがないって顔してるぜ!


   タクミ 「つうかスケールも大きく見えるぞ。」

 ユキオ 「アキラは毎日何してるんだよ。」

 アキラ 「今さぁ、健康に凝ってるんだ僕。」

   タクミ 「ふーん。健康かぁ。」

 ユキオ 「それでそんなに健やかに光ってるのか。」

 アキラ 「いやあ、すっごいいい人に出会ってさぁ、

     シャクティパッドっていう治療を受けたらさぁ、

     なんか毎日が明るくなっちゃって。これが定説だよ!

     うん、君達にも資料持ってきたから、貸してあげるよ」

 タクミ 「あ…いや、僕、良いわ。」

 ユキオ 「…僕も、遠慮しとくよ。」

 アキラ 「ミチヤは?バンドなんかより、もっと

     良い人生を送りたいと思わないか!」


 ミチヤ 「…い、いや、僕もちょっと。」

 アキラ 「あ、また…天空のエネルギーが僕に

     注入を始めた。ああああああ!

     来てる!来てる!

     最高でーす!最高でーす!

 タクミ 「…」

 ユキオ 「…」

 ミチヤ 「…消えたな。」

 タクミ 「…堅実に、生きていこうか…」

 ユキオ 「…そうだね。」



 ミチヤ 「…僕も、そうする。」



















   




マール ポッカートニー


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