Movie Starは大気圏でまた華と散る。




 僕は大学を卒業以来、まともな職についたことが無く、いつも2つ3つの職を掛け持ちして日々の糧を得ています。今は映像製作を主な食い扶持にしているのですが、この職も早いもので、5年近く続けている計算になります。その間に2年ほどブランクはあるんですが、大学を卒業前からだから…そうだよね、長いことやってるよね。


 製作進行を請け負ったり、シナリオを書いたり、ディレクションしたり、時には機械のオペレーションやカメラ弄りもやってます。機械に関しちゃ、まだまだ素人なんだけどね。


 でもまあ時間をかけてやっていると、それこそいろいろな製作のツボを覚えていくわけですよ、ええ、奥さん。


 映像を作る上で最も大事なことの中に、「素材は何より重い。」ってのがあります。


 たとえば、撮影を行って、取り終えた映像テープってのは、基本的に世の中に1本しかないわけですよ。ダビングすりゃいいじゃねえか、と思う方もいると思いますが、それこそDVやデジβの出てきた今ならまだしも、一昔前はダビングしただけで画質が劣化するんで、あまり好ましくないんですね。


 で、その映像テープを無くしたり、壊したりすることは何にもましてご法度な訳なんですよ。もう一回役者やカメラマンや監督を一日拘束して撮影を行うなんてのは無理なわけですから。予算や締め切りが無ければ別だけどね。


 だから、撮影したままの映像テープ、これを「素材」って言うんですが、これを扱う時には十分な注意を払って、大事に扱うってのがまず何より大事なんですよ。例えば「素材を電車で運ぶ時は居眠りするな。棚に置くな。」とか「素材の受け渡しは判子を押して確認しろ。」とか「宅急便やバイク便は緊急時以外使うな。自分の手で運べ。」と言った様々な決まりごとがあるんですよ。それだけ大事なんです。


 当然、映像編集を行う時も、一度ダビングして、あーでもないこーでもないとダビングしたテープをつなぎ合わせて弄繰り回した挙句、最後の本編集の時に元素材からつなぐ、ってのが鉄則になってるんですよ。


 と、まあ、そんなこんなが映像の世界の暗黙の掟な訳でして。


 僕がこれを学んだのは大体97年位、今から5年前ですね。

 その当時はDVやデジβと言ったものはまだ普及しておらず、映像の編集と言えばβ-カム(βじゃないよ)とVHSと言うのが主流でした。これらはダビングするたびに画質が劣化するので、元素材は本編集の時以外使わない、仮編集の時には必ず一度ダビングしたものを使う、と言うのがもう基本中の基本でした。

 で、僕は2年ほど実家に戻り、映像関係から遠ざかった時期がありました。その間にDVや様々なデジタル機器が普及し、今年僕がその職に戻った時点では、全ての機材が一新されておりました。あれ?β-カムは?DSRシリーズって何?浦島太郎状態になっておりました。


 で、まあ、全てが変わると、基本的な鉄則も変わってくるわけでして、「デジタルテープは画質の劣化が起きない」という新たな根底の上に編集スタイルが確立していたのです。あらー、ワークテープ(=素材をダビングしたもの)作らなくっていいんだー。ふーん。


 そうすると、素材をがしがしこすり始めたわけです。だって画質劣化しないんだもん。




 その時点で、僕はワークテープを作るもう一つの基本を忘れていました。





 先々週の金曜日の事ですが、



 いつものとおり映像編集を行っていて、がしがしとお客様からお借りした元素材テープを回して仮編集を行っておりました。当然、元素材ですから、代理のものはありません。ワンアンドオンリーな素材です。



 デジタルですから、i リンクでつなげば画質は落ちません。さすが21世紀。



 しかしながら、如何にデジタルテープとは言っても、






 テープ自身の耐久性は落ちるわけでして。







 –先々週の僕—


 (・∀・)スンスンスーン♪ ( ゚д゚)ハッ!

 (・∀・)スンスンスーン♪ (・Д・)イェァススンゾーヌ♪ ←編集中の僕


 鼻歌交じりで編集してました。



 よーし、できたできた。んじゃ本編集行こうかな。



 本編集開始!


  (・∀・)スンスンスーン♪




  ウィーン ←デッキの音




  ?





  キュルキュルキュル






  ???







  プチッ





  ハッ!←僕の顔



 映像製作の中で最もやってはいけないミスを犯してしまいました。

 素材テープを切ってしまいました。TC信号などの問題もあり、つなげば元に戻る、と言いう訳には行かないのです。厳密には、このテープはもう使用不可能なのです。

 これはまじで解雇を覚悟しました。つうか以前居た編集プロダクションでは蹴り10発食らって市中引き回しの上磔獄門で速攻解雇です。


 まあ、今回はいろいろとご容赦いただき、編集も事無きを得、無事納品までたどり着いたのですが、正直本当に死ぬかと思いました。


 ワークテープは必ず作るべきです。ええ。素材は大事にしましょう。


 前振りめちゃめちゃ長かったですね。要するに「失敗しちゃってごめんなさい。」と言うことを言いたかったのです。本当に僕は映像屋だったのだろうか?あまりにも基本的過ぎるミスでした。反省します。


 あと、この「ごめんなさい」は、

 このトラブル対応に追われたために、約束していた呑み会に行けなかったこと、特に主賓の国さんに言わなければいけないです。本当にごめんなさい。


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