偏狭読書情報

かれこれ14年続けてるコーナー「偏狭読書情報」です。更新したのは20回ほどですが。ええ、年に1~2回の更新で続けております。
【ヨーロッパ退屈日記】

軽い読み物。でも高品質なものがいい。そういうときに良くぱらぱらめくっていたのがこの本。高校時代に父の蔵書から勝手に持ち出して読んでいて、改めて20年ぶりくらいに再読。
山口瞳を中心とする随筆書きの天才集団が僕は好きなのだが、その仲間の一人が伊丹十三だったと思う。相変わらず、村上龍とも引けを取らぬ鼻につく文体。真っ向からの本質主義。そしてそれは明らかな教養主義。その上にあるヒューマーとエセーの文体。その上ジャギュア。相変わらず、いつ読んでもすばらしい。
【大地の子】

現在拝読中。まだ終了してませんが、オープニングの情景からして明らかに他の小説と違う。これは中国文学だ。いやもちろん、日本人の日本文学なのだけど、政治と国家にこれだけ振り回される姿をリアルに描かれるのは、(実際は取材力の効果なのでしょうが)中国で生まれた文学と言っても過言ではない。
そう、今仕事関係で中国に関する文章をいろいろ読んでいるのですが、本当に僕は歴史というものを知らない。中学高校大学と一切遣ってこなかった事を、本当に後悔している(というかこういう人間が大学に合格してはならない)。今改めて勉強中ですが、ちゃんと遣ってこないと駄目ですね、人として。
そして、自分の興味としても、また後に書きますが、最近「九龍城砦」にはまっておりまして。「是非行きたい!自分の目で見てみたい!と情熱を感じたのですが、実はもう20年ちかく前に取り壊されていたとのことを最近知りました。こういう、知識を持たなかった事で失ったチャンスというのを、これ以上増やしたくないのですよね。
全く本の話と関係なくなってしまった。
【深き心の底より】

読みやすい小川洋子の随筆集。ただし文体は強固。「博士の愛した数式」に比べると(当たり前だが)小粒で読みやすい。妙に母校の造詣が似てるなぁと思ったら、案の定先輩だった。作家が多すぎる学校です。
【来福の家】

国をはさんだアイデンティティの物語が二編。中国と台湾と日本。日本の中に居ながら異邦の感触をぬぐえない人たちの悩みと葛藤が、さらりと青春小説のように描かれている。すばらしい。
台湾語、中国語、日本語を軸にしての、自分の基礎となる部分は何かを問うたもの。母語、や国籍というものを全く意識しないで生きてきたことは、むしろ僥倖であり、また自分を深く問う機会を少なくして生きてきたのだな、と感じます。それでも、千葉に居る富山県民、としてのアイデンティティの喪失感は持ってますけど。

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